人生エクソダスしてなにものからも自由になりたかった

遁世したい。でもできない中年男の独白。

VVAULTで仮想ストレージを作ってからの良し悪しを述べる

※この記事は仮想ストレージソフトの「VVAULT」を個人的に使ってみた経過報告みたいな記事です。企業で導入したい方は参考にならないと思います。

 

 記憶域スペースもStoreMIもハードウェアRAIDも信用できなくなったので、VVAULTの”元データは隠しフォルダに普通に入ってる”という性質を信用して導入した。

 構成は[中速ストレージ]に[東芝のMN07ACA14T/MN08ACA14T、HGSTのWUH721414ALE604]の3台のみ。SSDのティアはない。HDD全容量を利用するのではなく、HDDごとの半分の容量をVVAULT用にあてがった。ちなみにHGSTのHDDにはデータが一切入ってない。

 この状態でCrystalDiskMarkを使ってアクセス速度を調べると、ミラーリングかな?と思うレベルの読み書き速度が出る。つまりシーケンシャル1000MB/sくらいだ。ここだけ見るとすごいことだが、実際使っていくうちに難点も見えてきた。

 

※記事作成当初は"中速"にHDD3台のみだったが、その後”高速”にSATASSDを400GBぶん、”最速”にNVMeのSSDを250GBぶん取り込んでいるので、ベンチマークのアクセス速度は”最速”部分のSSDとほぼ同程度となった。

 

①実際はアクセスする媒体の速度に依存する

 残念ながらベンチを取ってもずっと高速をキープするわけではなかった。

 例えば10GBのAVIファイルをコピーした時、windowsの普通のコピペでは最初の数秒だけ800~900MB/sと表示されるが10秒くらいで250MB/sに落ち着いた。つまりHDD本来のアクセス速度だ。

 化けの皮がはがれた訳だが、FireFileCopyなどメモリキャッシュを使うコピーソフトでは380MB/sくらいの表示になる。とはいえ実際平均すればどっちでも同じことなんだろうと思う。

 しかしこれは大容量の単体ファイルをコピーするから速度が落ちた時に平均化されるわけであって、1GB以下のデータを複数コピペするスタイルなら1個のHDDにアクセスするより断然早い

 

 ちなみに10GBのAVIなんてあり得るのかという疑問に関して言っておくと、ゲームキャプチャを60Fで行い、なおかつ高画質・無劣化で録画をすると1TBのHDDなんかおもちゃにもならないレベルで容量を喰らう。

 例えばOBSを使って[1920*1080・60F・無劣化出力]で録画した場合、画像ビットレート900MB/sの化け物のようなAVIが出来上がる。このデータは3分で20GBであり、つまり30分200GB、1時間400GBになる。3Dの映像を取り込んだ場合の映像ビットレートは1GB/sを超えるのでさらにファイルが大きくなる。

 OBSの[無劣化]AVIコーデックはUtVideoであり、アマレコTVでコーデックをLagarithに変えると圧縮が効くがそれでもUtVideoの6~7割程度だ。

 これが[高画質]ならmp4になり画像ビットレートも50MB/s程度に落ち着くが、画質の劣化に関しては特に3Dのゲームで顕著で、ギルティギアのようなアニメ調でも文字やGUIのフチがもやもやしていて画質が落ちてることを実感させてくれる。

 結局AVIで録画してシャープネス等の画質調整はエンコードソフトでやった方が同じファイルサイズでも画質が断然違ってくる。

 


VVAULTの仮想ストレージと取り込み元のHDDのアクセスがかち合うとフリーズする

 これは最初意味が分からなかったが、経緯を順に説明すると、

1 アクセス速度を期待して仮想ストレージにゲームを入れる

2 ゲームデータが入っているのはMN08ACA14T(以下MN08とする)

3 ゲーム起動中に録画データをMN08のVVAULTじゃない部分のドライブに移動させようとする

4 ゲームがフリーズしパソコンの挙動が悪化する

 エクスプローラがクラッシュしたのかと思ったが、MN08のドライブと仮想ストレージを開いていたフォルダだけがクラッシュしていた。このためタスクマネージャの新しいタスクでexplorerを開くと普通に新しいフォルダが開いた。なおタスクマネージャもフリーズを数回繰り返しており、原因がわからなかった当初はCtrlAltDelete→再起動しか道が無かった。

 chromeを開いた状態だったが操作は何事もなく受け付けた。ただしyoutubeの画面が真っ黒くなったので、当初グラボがいかれたかと思ったが画面全体がおかしくなるはずなのでそうでもなかった。

 パソコンの強制終了と再起動を2回試みたが似た場面でフリーズしたのでどうにもならなかった。

 

 そういえばMN08のディスクアクセスが100%だったことを思い出し、ブラウザからVVAULTの管理コンソールを開き、マスタドライブのマウントを解除した結果、何事もなかったかのようにパソコンの挙動が改善した。しかしこれでは仮想ストレージが消えたことになるのでマウントし直しフォルダ内を確認したが、おかしな部分がなかったので安堵した。

 強制マウント解除はディスクアクセス中に無理やり取り外すようなものなので最後の手段なことに変わりない。

 

 他にも、ソースになってるMN08にwindowsのバックアップイメージをつくるスケジュールをしていると、バックアップ中MN08は多少重い程度の挙動だがVVAULTの仮想ストレージはハングする。元のHDDの使用率が100%で固定されてるようなビジー状態だとまったく操作を受け付けなくなるようだ。


③そもそも仮想ストレージに書き込みを大量に行うと不具合が出る

 軽い状態ならエクスプローラのクラッシュ、面倒なのはマウント解除。

 大量の書き込みとはどういう状態かと言うと、↑で述べた動画ファイルの移動とかデータの引っ越しが該当すると思う。こういうデータの書き込みが多くなった場合、仮想ストレージを開いたフォルダがアクセスが効かなくなり、エクスプローラの再起動をする羽目になる。

 それでもドライブレターがちゃんと存在するならまだしも、酷い時には仮想ドライブが消える。この場合管理コンソールではちゃんとマウントしていることになっているのが厄介で、windowsサービスでVVAULT関連のサービスが「実行中」ではなく「起動中」になっている。停止ではなく起動中なのでサービスから実行し直すことができない。

 仕方ないので管理コンソールでマウントし直しする必要がある。

 ティアリングONかどうかが影響するかはなんとも言えない。


④同じティアではドライブが上から順に使われる

 不具合というほどのものではない。

 ↑で述べたように中速ストレージのみにHDDが3台取り込みされている。取り込み順に整理されるので、上からMN07,MN08,WUHの順になる。これらで構成された仮想ストレージにティアリング50%、つまり使用率が50%超えたら配当を変える設定にしているが、実際どうなるかというと当初MN07以外ほぼ空だった。

 MN07の利用が50%超えたことで、はみ出た分?を上から2番目のMN08にも保存するようになった。しかし相変わらずWUHはほぼ空である。

 しかし何もデータが無いかというとそうでもなく、WUHの方の隠しフォルダ「VV000」には仮想ストレージのフォルダと同じものが作られている。単にそのフォルダの中が空なだけである。

 均等に使われないので特定の元ドライブだけデータが多いことになり不平等感があるが、逆にドライブ取り込みを解除したいときにデータの引っ越しをするときはデータの少ないドライブなら手間もかからないし、やむを得ずVVAULTの隠しフォルダを探すときに散らばっていると面倒くさいかもしれない。

 

 正直これに関して何かする余地がない。

 厭だったらパンパンなドライブを外してデータを残りのドライブに移し替えするのを待つか、ティアリングの設定を20~30%とかにしてすぐ引っ越しさせるようにすればいいだろう。しかしその間のディスクアクセスはかなり言うことを聞かないので寝ている間にするしかない。そしてそこまでする必要があるかも分からない。


⑤一番上位のストレージに空きがないとコピーでデータ追加できない

 これは出くわすと初見では対処に苦慮する。

 例えば私は”最速ストレージ”(一番上)にNVMeのSSDのうち250GBを取り込んでいる。250GBを多いと見るか少ないと見るかは人によるだろうが、VVAULTを使っている場合、この仮想ストレージにデータを入れると順当に最速ストレージからデータを入れていく

 これが問題で、例えば入っているデータのアクセス日時が古いなら高速・中速、と下位にティアリングしていくのだが、最速ストレージに入っているデータの作成日時が新しく、どれも下位に落とす対象だと判断されない場合、「ティアリング中」と管理コンソールで表示されていたとしてもティアリングが全く行われない。

 そのため最速ストレージの最大容量の100%まで使われているとコピーが拒否される

 各々VVAULTでデータ取り込みしたストレージは「VV000」という隠しフォルダが作成されるので、データは実際にはその隠しフォルダに入っているのが、だからと言ってHDDの「VV000」にデータを移し替えてもVVAULTは認識してくれない。

 

 これの対処法は満載になったストレージのティアを下げることだ。

 私の場合100%の使用率になったNVMeのSSDを”最速”から”中速”まで下げた。

 こうすることで、同じく”中速”のHDDの空きがある部分にデータの均等化が行われた、つまりHDDにデータを移動したことでSSDの使用率がティアリング対象%まで下げられた。ティアリングが済んだ(データ移行が終わった)ら元の”最速”にティアを戻してやればいい。


⑥ドライブレターを消費する

 これは”不具合”というレベルの話ではないが、しかしディスクが多くなると管理画面が縦に長くなるので鬱陶しくなる問題がある。しかしドライブレターをアクセスの根拠としていることはメリットでもある。

 例えばST8000DM004など、安くて大容量なSMRのHDDで低速ストレージを構成するとする。この場合のボリューム作成は、ドライブ全部使っても部分利用でもドライブレターを最低1つは割り当てる必要がある。つまりドライブレターのないボリュームはVVAULTで使えない。最大でディスク全部を使った1つのボリュームをつくることになるだろう。

 8TBのHDDなら8TB(Windows上だと7.27TB)のボリュームということだ。これが3~4台ならまだしも、10台取り込むとするとドライブレターを10個使うことになる。

 ドライブレターに使用可能なアルファベットは26文字とは言うが、パーティションソフトなど外部ソフトだとC以降の割り当てしかできない。AとBのドライブレターはWindowsの[マイコンピュータ]右クリック→[管理]→[記憶域→ディスクの管理]によってのみ割り当てが可能である。それを知らなければ実質23(VVAULTの仮想ストレージ分-1)個がドライブレターの最大値である。Cドライブも割り当て可能とはいえ、OSが入っているドライブと容量を折半することは動作が重くなるなどのリスクも上がるので、OSが入っているドライブも、そこを切り分けて新規ボリュームを割り当てることもお薦めしがたい。

 しかしSMRのHDDはVVAULT向きである。というより普通のRAID向きではない。

 シーケンシャル以外のアクセスが劣悪なSMRでは、ファイルとして単体で存在できるVVAULTの方がRAIDより扱いやすい。そして”RAID向きではない→大容量HDDが作られない”ということから8TB以上のSMRディスクは市場流通していない。VVAULTで疑似RAIDされることでSMRは扱いやすくなるのである。

 しかしドライブレターで管理していることで、接続方法は別にSATAでなくてもよいという利点が生まれる。

 SATA増設ポートを買わなくても、USB外付けHDDケースを使えばVVAULTで認識してくれる。外付けHDDケースということは電源もパソコンのものではなくコンセントから取れるのでタップを買えばいいだけのことだ。外付けドライブなのでクリップファンみたいなものを冷却に使ってもいい。

 パソコン以外の部分が嵩張ることになるが、逆にミニタワーやノートパソコンが本体でもディスクを最大までつなげることができる。

 マイコンピュータを開いたときにデバイスとドライブ(26)となっているのも壮観かもしれない。


とはいえ…

 ネガティブなことばかり言ったが、SATASSDを凌駕し安物のNVMeと同レベルのアクセス速度をRAIDでもないのに実現できるVVAULTはすさまじく手軽である。

 ハードウェアRAIDはわからないが、階層記憶域はSSD部位を使い切った状態のディスクアクセスの遅さは「悲惨」と言うより他なく、StoreMIも健康状態が見れないので知らないうちに危険な状態になっているリスクがある。そしてSMRのHDDを使うにはRAIDはあまりに厳しい。

 安価で大容量なストレージを手軽に作れるのは、結局VVAULTということになる。