記憶域の新たな選択肢として「VVAULT」を検討する
今まで「AMD StoreMI」「記憶域プール」を試し試しやってみたものの、「StoreMI」は1SSD+1HDDの組み合わせが基本であり、高速部位はSSD部分に依存するし、取り外しの処理が面倒くさい。「記憶域プール」はミラー+パリティで爆速を狙えるもののドライブ作成がとてつもなく面倒で、取り外しも面倒、そしてWindowsに障害があって再起動したときデータのインデックスが飛ぶ可能性がある、という地雷がたくさんある。正直どちらも安心して使えるとは限らない。
なので第3の選択として、「VVAULT」を検討してみる。
※「VVAULT」は企業がよく使うソフトですが個人利用も可能です。今回個人利用に関して述べていくので、企業で導入したいと考えている人は素直にソリトンシステムズに相談してください。
そもそも容量をすべてSSDで賄えるという人は、SSDとHDDをちゃんぽんする必要がないので帰っていいです。
VVAULTとは
詳しくはここを見ていただきたい。
VVAULTはソリトンシステムズが提供する仮想ストレージ管理ソフトである。
主に企業が、数をそろえなければならないが部署によって使う部署と使わない部署があり導入・管理が煩雑になったサーバーを一元化するもので、ディスククォータやプロビジョニングによって枠をまず整えて足りなくなったら補充するような柔軟な処理ができることから導入が進んでいるようだ。
だが個人向けのVVAULTもあり、年間無料で1仮想ドライブ作成できる。年6000円払えば2仮想ドライブ作成できる。
インストールの手順があるが管理はブラウザ上で行う。そのときログインが必要だが、ソリトンシステムズでサポートを受ける時のユーザIDとパスワードを使うわけではない。パソコンにログインするときのパスワードを使い、そのときのアカウント名がログインIDである。
マニュアルはその管理画面で”?マークのついたフキダシ”をクリックしてPDFを閲覧するものになるが、スタートメニューの「VVAULT」のフォルダにも同じPDFが入っている。
VVAULT個人導入のメリット・デメリット
メリットは、
- SSDもHDDもNASもクラウドストレージも全部ちゃんぽんにできる
- 容量も取り込み時・取り込み後の設定で自由に変更できる
- 取り込み元の一部分だけ使うことができる
- データ退避も必要ない
- ディスク取り外しの方法も簡単
- ディスク容量は足し算。「全取り込みドライブの合計値-バッファ」
- ティアリングによって保管場所を自動で変えてくれる
- ティアリングは時間指定できる
- 転送速度は最高速Tierに依存。NVMeのM.2SSDなんかにするとかなり早い
- JBODやストライピングと違って駄目なドライブだけ切り分けられる
デメリットは、
- SSD容量(高速ティア)の切れ目が速度の切れ目
- そもそもHDDだけに関して言えばシングルより遅くなる
- ドライブレターのないローカルストレージは取り込めない
- 仮想ストレージ+元のストレージのぶんだけドライブレターを使う
- ディスク全部取り込んでもドライブレターを隠せない
- パーティション分割できない
- デフラグできない
ということが挙げられるだろう。
メリット
まずメリットについて述べていく。
これはティアリングでも言えることだが、最速・高速・中速・低速・クラウドの5段階に任意のストレージを取り込み対象にしていくことができる。目安として、
私はクラウドを使わないし試しなので、最速に「XPG SSD M.2 1TB SX8100」(ADATA-SSD)、中速に「M08ACA14T」(東芝-HDD)を宛がってドライブを作ってみた。もう結構使っているのでキャプチャは載せないが、仮想ストレージ作成時にはCrystal Disk MarkでもSSDのスペック通りの読み書き速度だった。このADATAのSSDが半分以上使うと書き込み速度がガタ落ちするという欠点を抱えていたことは予想外だったが、それでも使い始め当初の速度は良好だった。
この「VVAULT」は仮想ストレージの構成がとてもやりやすく、特に追加に関しては”HDDのアイコンに+のマークがついたもの”をクリックするか、導入したいティアで”追加”をクリックすれば挿入するディスクを選択できる。ディスク全部取り込むのも可能だが、ディスクの一部分だけを取り込み領域として使うことができる。これによって、14TBのうち7TBだけ使いたいということも可能になる。
気を付けなければならないことは仮想ストレージを作成する時、元のストレージでは隠しフォルダとしてディスク内で管理されることになるということ。つまり間違って元のストレージ側の隠しフォルダの中身をいじってしまった場合、仮想ストレージ側で不具合が生じるかもしれないということだ。
そこに気を付けていれば(アクセスしなければ)、”元ストレージが問題発生した”とか”単純に容量が足りないので買い替えた”とかの場合にデータを退避することになっても非常にシンプルに処理できる。そもそも①新しいストレージを取り込む、②外すストレージを退避する、という作業手順は「記憶域プール」での入れ替え作業と同じだが、「VVAULT」の場合”取り外しオプション”で①どこのティアに退避させるか②データをそのまま/削除/移動するかを選べるので、元のストレージをどうするかという処理も同時にできる。
ディスク容量が割と大きめに確保できるのも好感度だ。
「StoreMI」「記憶域のミラー高速パリティ」はSSDに高頻度のデータをミラーリングさせるので、SSDの容量は大きければ快速部分が増えるだけでストレージ容量はHDDに依存する。なので、SSD+HDDならHDDの台数+構成方法でしか容量確保できない。「StoreMI」ならSATAを最低2枠、「記憶域」は最低5枠使う。マザーボードでは多くて10枠なので、SATA用のインターフェースカードを買って増設する必要も出てくるかもしれない。
「VVAULT」の容量は足し算だ。例えば1TBのSSD1台、14TBのHDD3台をそれぞれ容量全部導入した場合、1+14*3で43TBの容量の仮想ストレージを作ることができる。
「StoreMI」と違って、「VVAULT」と「記憶域」はプロビジョニングができるというのも使う人によっては便利なのかもしれない。これは↑のストレージを作るときで例えると、実際容量は43TBしかないが100TBというテイで仮想ストレージをつくることができるというものだ。”仮想”だからこういうことも可能なのだ。しかし実容量は43TBしかないので、ぼちぼち残量が足りないというライン(これも仮想ストレージ作成時や以降の設定で残容量%で指定できる)で新しいストレージを足せと警告が出るという具合だ。最初から決まった容量をあてがってしまうと使う場所・使わない場所で予想より差が大きくなったとき調整が面倒になるが、最初から大きな枠ならやりくりも容易になる。全体的に足りなくなったらストレージを足せばよいのである。
デメリット
ティアリングはSSDの高速性とHDDの大容量を併用する賢い方法だが、大前提としてアクセス頻度を調査してデータの置き換えをするというものであり、やってることはデフラグと似ている。
データの引っ越しなど一度に大きなデータの書き込みある場合、SSDの容量がある最初のうちは速度があるが、SSD設定時の警戒域(デフォルトでは10%)を切って強制的なティアリングが起きた場合、書き込み速度は大幅に低下するか、まったくドライブが応答しなくなる。
今回利用したHDD(東芝MN07ACA14T)は通常なら書き込み150~200MB/sは出るのだが、高速ティアの設定をしないHDD単体だけで構成したら書き込み速度は20~50MB/sだった。これにMN08ACA14Tを足しHDD2台で構成した場合、40~80MB/sになった。単純に速度が倍になったので、ストライピングではないまさにJBODのようなものだろう。HDDだけでの速度の遅さはミラー高速パリティとよく似ている。
このティアリングは裏でデータの移し替えをやっているわけだから、そのストレージに書き込みや読み込みをしようとしたら並列処理になる、つまり遅くなる。そのためティアリングをさせる場合、単にストレージの使用割合をトリガーにするのではなく、ティアリングの時間・曜日を設定しておくことで普段使う時間帯にティアリングという余計な作業をさせないようにする必要がある。
また、単純にSSDをキャッシュとして考え容量としては考えないなら、まず低速ティアで主要なストレージとしてHDDだけで構成してしまい、データの引っ越しが終わったらSSDを高速ティアに導入するほうが後に面倒事にならなくていい。私はSSD+HDDで構成したがSSDを使い切って(90%オーバー)ティアリングが起きたときにエクスプローラーがフリーズしまくったので、結局SSDを取り外しHDDだけの状態でファイルの引っ越しをした。
「VVAULT」は「StoreMI」「記憶域」と違って、取り込み元のドライブレターが必須になる。これはストレージ取り込みの際に場所の指定が必須であり、未フォーマットやドライブレターがないドライブは選択しようがないからである。例外的にNASとクラウドストレージがあるが、それこそ企業でサーバごとに管理しているのでなければ実際使うのはSATAやNVMeで接続したSSD・HDDだろう。
「VVAULT」は取り込みの分量を自由に決められ元のドライブを保持したまま仮想ストレージを間借りして作ることができる。しかしこれが災いしてか、ドライブすべてを元ストレージにしてもドライブレターがマスクされることはない。元ストレージのドライブレター、仮想ストレージ作成後のドライブレターの両方が必要になってくる。
なので、例えばHDD10台を元ストレージにして仮想ストレージ1台つくる場合、必要なドライブレターは11個である。ドライブレターに割り当てることができるアルファベットは26文字中、AとB、OSの起動用ドライブの3つを除いた23文字である。「VVAULT」無料版なら1台分、有料版をフル活用するなら2台分のドライブレターが必要だから、元ストレージにあてがえるドライブレターは21~22文字までである。さらにDVDドライブを使えばその台数分、フラッシュメモリ・外付けHDDを読み込もうと思ったらその台数分ドライブレターは自動で割り当てられるので減る。
そもそも今使っているドライブが1ドライブ1ドライブレターならそうなる、という話で、そのドライブをパーティションで3つくらい区切っていればアルファベットの消費量もそれだけ増えているわけだ。実際の台数とイコールとは限らない。
総論
結論から言うと、「VVAULT」は個人向けを使っても「StoreMI」「記憶域」に比べて導入・後処理の面で非常に楽である。高速ストレージを使って早く機能させるにはアクセス頻度確認の上でティアリングしてから、ということになるが、それは結局「StoreMI」「記憶域」でも同じである。とすると、あとは面倒くさくなくて一番容量が確保できる「VVAULT」にデメリットらしいデメリットはない。
ドライブレターの事で色々言ったが、普通に考えて20台もHDDをパソコン一台に繋げるという絵面は想像しにくい。仮にそうするにしてもマザボのSATAではいいとこ10枠なので増設のインターフェースカードを差したりNASを導入するしかないが、RAIDも使わないシングルでは意味がない(どうせ台数分ドライブレターを使う)のに、ミラーやパリティなら利用可能量は減る(ミラー50%、パリティ((台数-1)/台数)%)のでありがたみが薄いし、そこまでしてドライブレターを節約するなら容量の小さいものを買い替えるべきだろう。
そもそもこんな変な困り方をするのも個人利用だからでもある。企業ならこの仮想ストレージを共有ドライブと言う形でしか見ないので、そもそもドライブレターのやりくりなどエンドユーザーが考える必要がない。ドライブレター供給元は実際に仮想ストレージをドライブとして使うわけではないのでアルファベットの残量を気にしなくていい。問題があって交換するとき向けにアルファベットを何個か使わないでおけば良いわけだし、仮に枠全部使っていても他のドライブにデータを退避させることができるので、よほどのことがなければそこの心配をしなくていい。
「VVAULT」は無料版もある。ストレージ導入に余裕があり、ただSSDに記録させるのはもったいないと思う人は利用してみる価値はあるだろう。
ちなみに瓦を使ってもいいかどうかに関して言えば”普通のRAIDより可能性はある”というところになるだろう。
「VVAULT」は普通のRAIDのようにファイルをばらばらのデータではなく単体のファイルとして保存する。なので仮想ストレージ上ではひとつのフォルダに収まっているように見えるが実際はあちこちに点在している、ということにもなる。
この特性ゆえに特定のストレージが壊れても記憶域全体がおしゃかになるストライピングやJBODより優れているのである。
瓦…SMR式のHDDはランダム書き込みするRAIDとは相性が絶望的に悪く、「記憶域」のミラー高速パリティでも結局データは低速域に置くので軽減策にならない。しかし「VVAULT」は1個のファイルとして完結させるので、読み込みも書き込みもシーケンシャルになる。なのでSMR式のHDDでも低速ストレージとして選択の候補として可能性はある。